2018-05-17

ポルノ本意制の通貨が登場したことにより今後予想される問題について

ポルノ動画サイトの最大手であるポルノハブが仮想通貨Vergeによる支払いを受け付けているそうだ。

世界最大のポルノサイトが仮想通貨「verge」に対応、アクセスしてみるとびっくり! ポルノ業界が急激に進化中!

これはとても面白い事象である。というのも、この通貨はポルノと交換できることがポルノハブによって保証されているわけだ。すなわち、これは金本位制ならぬポルノ本位制である。しかもこの話は単なる空想に終わらない。ポルノハブは実際にこの通貨とポルノの交換を行っているわけで実態がある。ここにポルノ本位制の通貨が登場した。

ポルノ本位制の通貨が存在する社会はどのように変革していくのか、ポルノ本意制の通貨を使うときには何に気をつければよいのか。我々人類は通貨と経済学について長い歴史があるので、歴史から学ぶことで今後の動向は予測できる。本記事ではポルノ本位制の通貨がもたらすシュールな世界を紹介しよう。

ある通貨はポルノと交換できることが保証されているとして、一体どのようなポルノと交換できるのだろうか。ポルノはどのようなものであってもポルノであり、したがってポルノとしての価値を持つはずだ。質の高いポルノを生産するのにはコストがかかる。すると、世の中には質の悪い製造が容易なポルノが量産されるだろう。通貨と交換品の価値に差が生じた場合、人々は通貨と交換するポルノには質の悪いポルノを使い、質の良いポルノは貯蓄するようになる。これを「悪ポルノは良ポルノを駆逐する」といい、グレシャムの法則とも呼ばれている。

経済学的にポルノの価値を考えると興味深い事情がある。ポルノの価値はまだ誰も見たことのない市場に出回っていない新作ほど高い。みんな見たような市場に出回りすぎたポルノは価値が低い。これを考えると、ポルノは金のように価値が安定しておらず、消費財である。しかし金の生産量は簡単に増やせないが、ポルノの生産量は裸の人間とカメラさえあればいくらでも生産できる。しかも一人の人間に複数のカメラを使うことで並列生産も可能だ。中には車とドラゴンをポルノだとみなす人もいるが、ドラゴンの用意はやや難しい。最近は地図上にもドラゴンの住まう地と書かれる土地が少なくなったからだ。

ポルノ本意制の社会では、実経済に出回っている通貨がいつポルノとの交換を要求されるかわからない。そこで、銀行は十分な量の価値の高い未公開ポルノを戦略的に備蓄しておく。これを準備ポルノという。

なぜ実経済が存在するポルノより多い通貨を動かすようになるのだろうか。それは借金の存在のためだ。まだポルノを所有していない人間が、将来ポルノを所有する信用によって通貨を借りる。その通貨でポルノを生産し、借金を返す。このとき、生産したポルノによって借金以上の価値が生まれれば得をする。ところで、借金をしたときまだポルノは世の中に存在していなかったわけだ。しかし借金をしなければポルノは生産されなかった。したがって、実経済では常に準備ポルノ以上の通貨が動いているのだ。

現実には、市場に出回る通貨すべてを一斉に換ポルノしたときの需要を満たすほどの準備ポルノを用意することはできないだろう。皆が一斉に通貨とポルノ交換、すなわち換ポルノを要求したとき、取り付け騒ぎが起き市場が混乱する。このような取り付け騒ぎはめったに起こらないが、たまに些細な噂が拡大解釈されて発生することがある。例えば女子高生が何気なくつぶやいた、「最近ポルノハブ危ないんだって」という言葉からポルノの取り付け騒ぎが発生し、準備ポルノの少なかった弱小ポルノサイトが閉鎖に追い込まれることは十分にあるだろう。そのような自体に陥った場合、まず自殺したと噂される理事長自ら生存を主張し、巨大スクリーンでポルノを映すことにより準備ポルノは十分にあることをアピールすべきだ。

不況時には、ポルノが十分に国内に供給されない。このとき、国内にすらポルノ供給が足りていないのに海外にポルノを輸出するのはけしからんという極めて素朴で単純な考え方が国民に芽生え、そのような狭い思想の政治家が当選する。結果として、国家はお互いにポルノ輸出を禁ずるようになり、各国が経済的に鎖国し始める。

こうしたことから、ポルノ本意制はいずれ破綻し、廃止しなければならなくなるだろう。どうやって廃止するのかを歴史に学んで今から対策しておこう。国家は通貨とポルノの法定為替を一方的に定め、国民の所有するポルノ財産をすべて法定為替で強制的に買い上げるかもしれない。

そして、今と同じようにポルノと通貨は変動為替に移行し、取引所に直結したアルゴリズムトレード勢がマイクロ秒単位でポルノ価値を判断して先物取引をするようになるだろう。

他にも面白い思考実験として、フィクションの世界では水本位制がある。これはFalloutというゲームの世界の設定だ。全面核戦争の後に清潔な飲料水が貴重になり水が価値になった。しかし水を持ち運ぶのは手間なので、ある有力な水商人が水とボトルキャップを交換するようになった。なぜボトルキャップなのかと言うと、もはやボトルキャップを製造する技術や設備は存在しないからだ。つまり、ボトルキャップは偽造が実質不可能で、全面核戦争前に製造されたものしか残っていない。偽造が不可能であれば貨幣として使うには十分だ。

2018-05-14

OpenBSD、1985年に追加されたIntelの最新の誇大広告された機能を使わないことにより脆弱性を華麗に回避

“We didn't chase the fad of using every Intel CPU feature” | Hacker News

'Re: CVE-2018-8897' - MARC

前回の記事であるIntelの古いマニュアルを誤読したために生じた脆弱性では、IntelのCPUがスタック切り替えるためにss/spレジスターをアトミックに更新する汚いハックとして、ssレジスターが変更された直後の1命令は割り込みが遅延される古い仕様があるが、多くのOSはこの古い仕様を把握していなかったため、ssレジスターを変更した直後の1命令でカーネルモードに入り、かつハードウェアブレイクポイントが設定されたことにより割り込みを起こせば、カーネルモードに入った直後にカーネルのコードを1命令たりとも実行していない状況でカーネルモードとしてユーザーの割り込みが実行される脆弱性を引き起こしていた。

さて、各OSが対応に追われるなか、セキュリティに万全の体制を取ることで定評のあるOpenBSDでは特に何事もなくのほほんとしているので、MLにこのことについて質問をするものがいた。

OpenBSDが影響を受けないという理由について教えてほしいんですけど?

バカな質問ですみませんが、このFreeBSDもこの問題に引っかかっているのに、なぜOpenBSDは平気なのか不思議です。

事前に把握してたんですか?

昨日、一面記事になったような大ニュースになぜOpenBSDは引っかかっていなかったのか気になります。

これに対するTheo De Raadtの返事。

Intelの誇大広告まみれのCPU機能を全部追いかけるようなマネはしていないんでな。

We didn't chase the fad of using every Intel cpu feature.

強すぎる。

この機能というのはi386から追加されたハードウェアブレイクポイント機能のことだ。なんとOpenBSDではユーザースペースからx86のハードウェアブレイクポイント機能の使用を許可していない。ではgdbのようなユーザースペースのデバッガーはどうやってブレイクポイントを実装しているのかと言うと、古き良きソフトウェア実装を用いている。ブレイクポイントを仕掛けたい部分のコードを割り込み命令(int 3とか)とか無効命令(ゼロ除算)で置き換えておき、例外割り込みをブレイクポイントを仕掛けたい場所で発生させることによる移植性の高いソフトウェア実装だ。

ちなみに、IntelのCPUがハードウェアブレイクポイント機能を実装したのは1985年のi386にまで遡ることができる。

結果として、OpenBSDは今回の主要なOSが軒並み影響を受けた問題に対して何の影響も受けていないので、結果的に正しかったと言えるが、いやしかし凄まじい。OpenBSDのセキュリティにかける情熱を過小評価していた。

2018-05-11

Intelの古いマニュアルを誤読したために生じた脆弱性

Multiple OS Vendors Release Security Patches After Misinterpreting Intel Docs

Multiple OS Vendors Release Security Patches After Misinterpreting Intel Docs | Hacker News

8086でスタックを切り替えるには、ssレジスターとspレジスターを両方変更する必要がある。しかし、ssレジスターだけを変更してまだspレジスターを変更していないときに割り込みがかかると問題だ。そこで、8086は粋なはからいによって例外的にこの問題に対処した。ssレジスターを変更した直後の1命令では割り込みが発生しない。仮に割り込みが起きたとしても1命令を実行するまでは遅延される。

もし、ssレジスターを書き換えた直後の1命令でカーネルモードに入った場合、この粋なはからいが問題になる。カーネルモードに入ったあと、カーネルコードを1命令たりとも実行していない段階で割り込みが発生する可能性があるからだ。しかも実行はカーネルモードだ。

2018-05-08

glibcのabortマニュアルの中絶方針ジョークについて

Who controls glibc? [LWN.net]

「glibcのabortのマニュアルにはabort(終了)とabortion(中絶)をかけた中絶ジョークがあり、これはマニュアルとして有益ではなくて混乱の元なので削除するというパッチが提出され、受け入れられたが、RMSの反対により差し戻された」

これだけ読むとくだらない出来事のように思えるし、人によってはこのジョークの存在が好ましくないとか下品だと思うかもしれない。しかし、これは単に下品なジョークで片付けてよい問題ではない。実は音はもっと深いのだ。

まず、ジョークの内容は中絶ジョークではなく、中絶方針ジョークなのだ。

glibcのabortのマニュアルには以下の記載がある。

将来の変更警告:連邦検閲規制委員会に提案された方針によれば、この関数を呼び出すことができる可能性についての情報を我々が与えることが禁止されるかもしれない。我々はこれがプログラムを終了する適切な方法ではないと言わざるを得なくなるかもしれない。

問題の方針とは、メキシコシティポリシーと呼ばれているアメリカ合衆国では歴史の深いものだ。

Mexico City policy - Wikipedia

メキシコシティポリシーとはアメリカ合衆国政府の方針で外国籍のNGOがアメリカ政府から出資、健康補助、HIV補助、妊婦及び子供の補助を受ける場合「中絶の実施、並びに中絶を家族計画の方法として積極的に宣伝する」ことをしてはならない、というものだ。

これはアメリカ合衆国で中絶の違憲判決が出ていなかった時代から続く方針だ。歴史的に右翼である共和党はこの方針を肯定し、左翼である民主党は否定している。アメリカ合衆国における右翼とはキリスト教原理主義者を指し中絶は違法であるとの立場を取る。左翼はリベラルであり中絶は合法であるとの立場を取る。

メキシコシティポリシーの名前は1984年に共和党のロナルド・レーガン政権が名付けたものだ。これは1993年に民主党のビル・クリントン政権で撤回されたが、2001年に共和党のジョージ・W・ブッシュ政権で復活し、2009年に民主党のバラク・オバマ政権で撤回され、そして当然、2017年の共和党のドナルド・トランプ政権では復活した。

ちなみに、ブッシュ政権のときにメキシコシティポリシーの違憲性を問う訴訟で、アメリカ政府が外国籍のNGOを補助するときに中絶への立場を考慮することは違憲ではないという判決が出ている。

さて、話をglibcに戻そう。glibcというのはGNUであり自由ソフトウェア財団である。RMSが始めたGNUはその当初から左翼主義が全面的に出ており、ソフトウェア開発は政治活動だと考えている。その思想に基づけば、この20年前からマニュアルに存在する中絶方針ジョークは必要不可欠でありたやすく取り除いてはならないものである。

今回はRMSが強権を発動し、ジョークは残った。

この問題の背景事情を考えるに、私はこの中絶方針ジョークは残すべきであると思う。

2018-05-03

LLVMで5番目に貢献の多い開発者、LLVMの最近のSJW運動に反対して開発をやめると表明

One Of LLVM's Top Contributors Quits Development Over CoC, Outreach Program - Phoronix

[llvm-dev] I am leaving llvm

Rafael Avila de Espindolaは2006年からLLVMに対して4300以上もコミットした開発者で、現在LLVMの全Authorの中で第5位のコミット数を保有する開発者である。Rafaelは最近のLLVM Code of Conductと今年のアウトリーチプログラムへの参加を、「社会不正義」(Social Injustice)だと吐き捨ててLLVMの開発をやめる声明を出した。

LLVMのCode of Conductは以下の通り。

LLVM Community Code of Conduct — LLVM 7 documentation

  • 仲良く辛抱強くやれよ
  • 新参は歓迎しろよ
  • 迷惑かけんなよ
  • 尊敬しろよ
  • 言葉遣いには気をつけるのと、あと親切にしてやれよ

Code of Conductは、過去に様々な自由ソフトウェアコミュニティが取り入れて、その結果政治的な問題を引き起こしてきた歴史がある規約だ。そもそも存在自体が政治であるものを入れると純粋な技術から遠ざかり、些細な言葉遣いのような揚げ足取りの政治に終始するのは当然であると言えよう。

アウトリーチプログラムというのは現在コミュニティでマイノリティである属性を持った開発者を新規に確保するための優遇措置だ。属性というのは主に性別で、具体的には女性のことだ。しかしこれは純粋な技術力ではない性別のような条件で人を優遇するということであり、これはまさに性差別そのものである。これをやりだすと人物が純粋な技術力で評価されず、たまたまマイノリティの性や宗教や門地のような属性を持っていたというだけで優遇される。

私がさる理由はコミュニティの変化のためだ。現在のライセンス変更の議論は私がGCCの開発をしていた頃の自由ソフトウェア財団の政治を彷彿とさせるものがある。これだけではまだ去るほどの理由ではない。コードと同じように、LLVMはまだ最適なライセンスを選択しているし、コミュニティの変化というのがライセンスの変更だけであれば、まだ続けることもできた。

私が受け入れられないコミュニティの変化は社会不正義運動がはびこっていることだ。私がLLVMに参加したとき、誰も私の宗教や政治信条について疑問を呈するものはいなかった。我々は皆、良きコンパイラーフレームワークを作ることに注力していた。

ここ最近、Code of Conductやらが採用された。これによれば、コミュニティはすべての「政治信条」を歓迎するよう務めるとある。しかし、Code of Conductの存在に反対する政治信条を持つ者は歓迎できない。そして、カンファレンスに参加するにはCode of Conductへの同意が必要であるからして、私はもはや参加することができなくなった。

トドメの一撃は、LLVMがある団体と手を組んだことで、この団体は公に性別や門地による差別を行っている。これは私の倫理と真っ向から対立するものであり、私はこの手の輩と一緒くたにされないために、プロジェクトを去る必要がある。

RafaelのMLへの投稿は、最後に"So long, and thanks for all the bugs,"(さよなら、いままでバグをたくさんありがとう)と締めくくっている。銀河ヒッチハイクガイドへのリファレンスのようだ。