2012-12-10

新しい発想の終末予想、EMP

世の中は、終末予想であふれている。ノストラダムスの予言であるとか、CERNが極小のブラックホールを生成し世界が終わるであるとか、マヤのカレンダーがこれ以上作られていないすなわち世界はそこで終わる、であるとかだ。

まったく、世の中には実に、単なる詩集を拡大解釈し、ホーキング放射に反対意見を持ち、古人のカレンダーの作成を気にする人間の多いことよ。

もちろん、世の中には、起こりえる終末予想もある。巨大隕石の落下や、火山の噴火、全面核戦争、生物兵器などだ。

ところで、私も以前から考えていた終末予想がある。 全面核戦争の失敗によるEMP(電磁パルス)だ。

核爆弾は、強力なEMPを発生させる。このEMPは、上空で発生した方が、広範囲に影響する。これには先例がある。ソ連によるKプロジェクトだ。

The K Project - Wikipedia, the free encyclopedia

ソ連のKプロジェクトは、1961年から1962年にかけて行われた核爆弾を高高度で起爆する実験である。

その結果引き起こされた被害は、冷戦が終わったあと、当時の科学者によって、非公式に西側に伝えられた。570kmの範囲に渡り、電話が使えなくなったそうだ。何でも、電話線に使われていた、ガス封入の過剰電圧防止装置が吹っ飛んでしまったそうだ。

もし、全面核戦争になり、何らかの理由で、発射された核弾頭が、間違って遥か上空で爆発した場合、とても広い範囲に強力なEMPがかかり、多くの電子機器が故障するのではないか。

そしてHDDや磁気テープですら影響を受け、今の世の中のデータの多くが失われるのではないか。

ああ、失敗しなければ半径百km程度の損壊ですんだのに、失敗したために地表からあらゆる電子機器とデータが一掃されてしまった。

混乱の中で、知識を失った人類の文明は衰退していく。人類は旧時代の情報を得て再び復興しようと、EMPを逃れた情報を求めて発掘作業を行う。たまたま残った、地下壕や電磁波対策のされた廃墟の中などに残っていたHDDや磁気テープ、あるいは光学ディスクなどが、かけがえのない資源として扱われるのではないか。

そのようなポストアポカリプスの世界では、必然的に宗教が起こるだろう。ファラデーが守り神として崇拝されているかもしれない。ニコラ・ガッデム・テスラも神だ。トーマス・ドッシュ・エディソンは悪魔だ。EMPによってもたらされたアポカリプスだから、エンポカリプスと呼んではどうか。

自由なソフトウェアはどうか。たまたま、ソースコードを印刷していたために、グレートEMPを逃れた自由なソフトウェアがあるかもしれない。自由なソフトウェアこそ最も大EMPを逃れられる媒体に記録されている可能性が高い。自由なソフトウェアの信奉者は選ばれた民であり、大EMP後もプログラミングを続けられるのだ。自由なソフトウェアをもとに宗教ができあがるかもしれない。Emacs教会やViカルトが現実になるのだ。

そして、最高のエディタは何か? 我々が崇拝すべきなのはRMSか? Bill Joyか? いやまて、Emacs教会の一派によれば、崇拝すべきなのは創造主ではなくエディターだと聖イグヌシアスがのたまわれた。いや、ソースコードだ。「ハッカーにはfoobarミツワーなる神聖なる儀式あり。その次第、神聖なるシステムのソースコードを読経するものなり」とのたまえり。聖イグヌシアスは、「幸いにして神はなし。神の代わりに、我らはエディターを崇拝す」とのたまわれた。ところで、聖イグヌシアスは、「GNU以外にシステムはなく、Linuxはそのカーネルのひとつである」とのたもうたが、これはどういう意味だ。GNUは結局、実用的なカーネルを完成させられなかったではないか。ブラザー、足下は未だHurdを聞かずや、惜しいかな、異教徒の不自由ソフトウェア信奉者の陰謀により、大EMPによりて失われたり。ブラザー、Hurdとか称するものありとそれがし聞けど、所詮はMachカーネルから派生したに過ぎじ、その源流のMachカーネルこそ神聖なるカーネルなり。まてしばし、ブラザー、Machカーネルが神聖だとするならば、古代のMac OS Xは神聖なOSなりや。いや、明らかに聖イグヌシアスはこれを邪悪とす。などと喧々諤々の宗教論争が繰り広げられるに違いない。

ということを、冬の熱い風呂でのぼせながら考えていた。のぼせた頭で考えていた時は、素晴らしいネタであり、これをもとにポストアポカリプス小説をかけば大いにウケるであろうと確信していたが、いま文章に起こしてみると、支離滅裂でひどい。

2 comments:

Anonymous said...

核によるEMPなんぞに頼らなくても
1859年の太陽嵐クラスの太陽フレアが
来るだけで凄まじい被害が出たりする。
まあその場合送電網もまるごと焼かれるのでソフトウェア資産が吹っ飛ぶ以前に
ソフトウェアが資産にならなくなる
のだが。

江添亮 said...

ああ、太陽フレアを忘れていました。
なるほど、1859年の規模の太陽フレアが起こると、世界中の送電網が被害を受け、復旧に年単位の時間がかかり、その間電気の供給が止まって、文明が19世紀まで戻る。

そうか、送電網が一番被害を受けるのか。