2009-06-03

中島敦著、光と風と夢

中島敦の「光と風と夢」を読んだ。いままで、読もう読もうとは思っていたが、印刷された本が手に入らないため、読む気になれなかったのだ。というのも、96DPIのディスプレイに、日本語は複雑すぎるからだ。

結局、印刷された光と風と夢は手に入りそうにないので、青空文庫のものを読んだ。

内容は、ジキルとハイドを書いた、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの、サモアでの生活記である。実に興味深い。

さて、読み終わって、つくづく思った。どう考えても、これが芥川賞を逃したのは思えぬ。中島敦の文章は、どれも第一流に属するものであることは疑いがない。こんなすばらしい文章を評価できずして、一体芥川賞の審査員達は何を読んでいたというのだ。

芥川賞、なんと質の低い賞であることか。中島敦も太宰治も村上春樹も評価できずして、一体なんの面目があるというのか。塵芥川賞とでも改名したほうがいいだろう。

思うに、中島敦の作品は、常に死というものへの覚悟があるように思う。これは、中島敦自身、病弱であったことも、その理由のうちだろう。果たして、死への覚悟があれば、よい小説を書けるのだろうか。ニーチェが熱狂的な読者を持っていることから見ても、これは正しいように思われる。中江兆民の、続一年半も、たしかに優れた文章だった。

然るに、私はいささかの死ぬべき要因をも持ち合わせていない。この二ヶ月運動をしているので、かつて無いほどの健康を感じている。死の実感が無いものに、何で能く覚悟などできようか。

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