2009-04-19

予備自衛官補の試験の次第

予備自衛官補の試験の次第を書いておこうと思う。何かの参考になれば、これ幸いである。

私の場合、試験は宇治駐屯地で行うことになった。受付は7時30分からである。6時前に起きて支度をする。時間が余っていたので、スーパーマンのアニメを一つ観た。当日は、募集案内所から、車で送ってくれる手はずになっていたので、6時半頃に、家をでて、近所の駐屯地まで歩いて行った。途中、コンビニに立ち寄り、昼に食べるものを買うことにした。試験中は、駐屯地から出て、近所に買いに行くことはできない。弁当を買うとかさばるので、おにぎりとサンドイッチとアクエリアスを買うことにした。さて支払いを終えて、コンビニを出てから、ふと思った。アクエリアスは果たして、おにぎりやサンドイッチに合うだろうか。今更考えても仕方がない。そのまま募集案内所に向かった。

募集案内所から、車で宇治駐屯地に向かった。車については詳しくない故、車種などは分からぬが、どこにでもありそうな普通の車であった。ただ、ナンバープレートが他と違っている。通常のナンバープレートより横長のもので、数字列しか書いてなかった。後で調べた所によると、どうも自衛隊のナンバープレートは、少々変わっているようだ。

しばらくゆくと、前方にも、自衛隊のナンバープレートをつけたジープが走っていた。運転者の自衛官曰く、「ああ、あれは今日の面接官の人たちでしょうね」と。程なくして、宇治駐屯地に着いた。

駐屯地の中は広かった。とても広かった。思えば、京都に暮らしてよりこのかた、あまり広い平地を見た覚えはない。京都は実に狭苦しいところだ。

さて、案内された部屋で待っていた。まだ、お互いの会話はない。その日の宇治駐屯地の受験人数は、35人であった。全員、男子である。私を含めてほとんどの受験者は、スーツを着用していた。

さて、威厳ある人が出てきて、当日の試験の流れを説明し始めた。もちろん、威厳といっても、私には階級は分からなが、とにかく厳かな雰囲気を発している人であった。曰く、「ですから、私の指示した後に従って、その動作をしてください」と。ほぼこの調子で話していた。はて、この自衛官は、平生からこのような調子で話しているのだろうか。しかし、この手の話し方は、一朝一夕にできるものではないので、やはり平生からこんな風に話しているのかもしれない。まるで谷崎潤一郎の文章読本である。ダコと言う医者や、ヘイカンと言う番頭などが登場している。 

この後は、8時から12時まで、身体検査及び口述試験となっている。何人かは口述試験を先に行い、残りは身体検査に回された。私は、身体検査が先の組であった。まず、薬物検査の同意書に署名をしなければならない。薬物検査に同意しなければ、採用は無いという。もっとも、予備自衛官にわざわざ志願する人で、麻薬を常用しているような人はいないだろう。見た限りでは、拒否した人はいない様子であった。

身体検査は、通常行う健康診断と比べて、やや詳しいものであった。X線、採血、採尿に加えて、歯科、聴覚、視覚、色覚、計測、関節運動があった。

X線はなぜかパンツ一丁で行う。実際に撮るのは上半身だけなのに、不思議だ。

採血は読んで字の如く、血を採る検査である。ほんの数十ccほどだ。私は血管がわかりやすい腕をしているので、問題はなかった。採血の前に、「ところで、君は血を見るのが苦手ということはないだろうね」と聞かれた。なんでも、世の中には血を見るのが大変苦手で、たまに倒れる人がいるらしい。そういえば、小学生の時の血液検査でも、何人か倒れた子がいたと聞いた。幸いにして、私はそれほど繊細な神経を持ち合わせていない。

採尿は、薬物検査や糖尿病のためだろう。検査には、50cc以上の尿が必要である。幸いにして、私はちょうど小便がしたかったので、問題はなかった。

歯科は、歯の検査だ。虫歯は放置せずに即座に治すのは、そもそも当然である。

聴覚は、小さい特定の周波数の音を聞き取れるかの検査である。これも、通常は問題ないはずだ。

色覚というのは、色が見分けられるかを調べるものである。私は医学的な事はよく分からないが、世の中には、軽い色覚障害を、それと知らないままに暮らしている人が、結構いるらしい。検査には、いわゆる石原表と呼ばれている図を使う。大小の円を敷き詰めた図を見て、書かれている数字を答えたり、道をなぞったりする試験である。もっとも、これはよほどの強い色覚障害を持っていない限り、問題なく答えられるらしい。まず心配はないだろう。

計測というのは、身長、体重、胸囲、肺活量、血圧の計測である。肺活量だけは、今まではかった覚えがないために、少々不安であった。何でも、3000cc以上必要らしい。勢い込んで検査に望んだ所、5200ccであった。がんばればもうすこし上がった気もする。普通の人ならば、まず問題はないだろう。身長体重胸囲は、合格基準がある。たとえば身長163cmの私の場合、体重は、48kg以上、74kg以下でなければならないし、胸囲は78.5cm以上でなければならない。私の場合、体重は56kgで、胸囲は83cmであったので、全く問題はなかった。よほど肥満しているとか、病弱でやせ細っていない限り、問題はないだろう。血圧も、健康ならば問題はない。

関節運動というのは、関節を動かせるかという検査だ。これはパンツ一丁で行う。指の曲げ伸ばし、手足の曲げ伸ばし、前屈、後ろ反り、片足立ちなどの動作を行う。

これでいったん身体検査は終わりだが、この後に、問診というのが別にある。これは、パンツ一丁で立ち、名前、生年月日、住所を答え、検査官の健康上の質問に答え、胸に聴診器を当てる検査だ。なぜか、周りには四五人の面接官がいた。おそらく、入れ墨の有無は、ここで見ているに違いない。

身体検査を受けていて思った事としては、身長163cmの私は、チビではないということだ。不思議なことに、身長170cm超えの人は、むしろ少数派であった。180ともなると、極めてまれである。検査中の待ち時間は実に暇なので、適当に周りの人と話していた。身長が180以上もあると、日々着る服にも困るので、それほどいいこともないという話であった。

口述試験というのは、平たく言えば面接のことで、二人の面接官を相手に行った。面接で聞くことと言えば、どんな面接でも似たようなもので、志望動機とか、自分の性格であるとか、そんなようなことだ。圧迫面接ではなかった。

時間が余って暇なので、中島敦を読んでいた。待ち時間が結構あるので、暇をつぶせる本を一冊持って行くといいだろう。もっとも、大抵は近くにいる人との会話で暇をつぶしたのだが。予備自衛官というのは、結構いろんな人が受けるものだ。

12時になったので、弁当を使った。もっとも、私の場合は、昼飯後に問診があったので、食べて早々に問診に行った。問診が終わって戻る途中に、戦車などが何台か展示されていた。また、駐屯地内は至るところに桜の木が植えられていた。二週間前ならば、桜が満開できれいだったに違いない。少し惜しい気もした。

一時になったので、筆記試験を受けた。まず、適性検査。これは短時間で大量の問題を解くもので、全部解けなくても問題はない。もっとも、私は全部回答できた。これは性格診断なので、全問説くことに意味があるわけでもないのだが。二種類の適性検査があり、一つ目は、とても簡単な問題を大量に解くというものであった。四則演算、展開図を組み立てた場合の立体、論理的な問題(AはBと等しく、BはCと等しい。正しいものを選べ。 1.A>Bである。 2.A<Bである。 3.A=Bである。)、などなど。二つ目は、質問に対してYesかNoで答えるものである。質問の内容は、大抵似たようなもので、「誰かが自分の悪口を言っている気がする」、「周りの人間が自分につらく当たる」、「何事もうまくいかない予感がする」などである。すばやく直感で回答して、すべて回答し終えたら、見直す必要はないと言われた。ただ、回答は○ではなく、✓で付けるように、念を押して言われた。それでも、毎年一人は、○で回答する人がいるらしい。問題を終えて、ふと何気なく隣に目をやると、○で回答していた。また、「ああ、しまった」という声が聞こえて、消しゴムを使う音も、どこからか聞こえた。

その後、一般教養の問題がある、これは国語、数学、理科、社会、英語と五科目あって、すべて選択問題だった。回答時間は長くないが、問題数も少ないので、時間は余るだろう。問題の難易度としては中卒向けの一般教養の問題で、それほど難しい問題は出てこない。

その後、10分間の休憩を挟んで、作文があった。何について書くかというと、これがまたどうしようもなく直接的であった。思わず笑ってしまうほどだ。

今年は、受験者数が上がっているという。実感はないものの、やはり不況なのだろうか。

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