2009-04-07

サクラを見ながら考えた

満開の桜咲く、鴨川沿いを歩きながら、こう考えた。 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。夏目漱石は、こういう、どうしようもない状態から、そのはけ口を求めるため、芸術が生まれると書いている。しかし、この私には、一向に芸術が生まれそうにない。もっかの悩み事は、仕事だ。自衛隊の試験だ。

もちろん、自衛隊に受からないという結果もあるわけだ。筆記試験もさることながら、健康診断もかなり詳しく調べるらしい。もしや自覚のない病気でもあったら面倒だ。

自衛隊の経験はしてみたい。それには当然ながら、若い方がいいので、年齢的にも、今しかない。しかし一方で、自衛隊に入ると、少なくとも教育隊にいる半年は外界から切り離されてしまう。その後も、外出すらままならない始末。うーむ。

とは言え、現状で、ろくな仕事があるでもなし、また仮にあったにせよ、プログラマを吹っ切れないために、結局決断できずじまい。それなら、いっそ自衛隊に入った方が吹っ切れていいのではあるまいか。いやしかし……

しかし、自衛隊を五十前後の定年まで続けて、その後斡旋でどこか平凡な所に就職して定年を迎え、悠々自適に生涯を終えるというのも、どうも性に合わない。それなら、短期を前提にした二等陸海空士か。まあ、違いは、試験がより簡単なことと、辞める時に、雀の涙ほどの退職金がもらえるかどうかでしかないのだが。一任期、すなわち二年間につき、六十万円ほどだ。特にこだわるほどの金額でもない。

そもそも、合格したとしても、入隊するのは来年だ。それまでに、手当たり次第に求人に応募しまくるというのはどうか。京都大阪は広い、自分を雇ってくれるような物好きのひとつもあるはずだ。

まてよ、そもそも、それは一人自分だけではあるまいな。入隊は来年というのは、全員共通だ。自衛隊を今年受ける人間は、来年までの間、一体何をしているのだろう。バイトや命の洗濯はともかく、あらゆる求人を興味半分で、片端から応募する奴は、当然いるはずだ。全員が全員、軍事オタクで、自衛隊に熱烈に入りたくて受けたわけではないだろう。私のように、仕事がないから、とか、やることが見つからないから、などという中途半端な人間が相当いるはずである。なにしろ、入隊は来年なのだから、暇つぶしに求人に応募しまくる暇は十分にある。とすると、自衛隊というのは、合格したあとの辞退率が、相当高いのではあるまいか。

とにかく、桜はきれいだった。兼好法師は、たれこめて春の行方知らぬも云々と言っていたが、やはり春の行方は見知っておいた方がよい。

人生は彩られた影の上にある。

森鴎外訳、ファウスト

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